2021年ごろから少しずつ「 WEB3.0」という言葉を耳にするようになりました。言葉自体はよく聞くものの、その意味については曖昧という人もいるかもしれません。
それもそのはずで、WEB3.0はあくまで概念であり明確な定義のある言葉ではありません。実際WEB3.0という概念自体に懐疑的な方も多くいるようですが、あえて定義づけするのであれば「中央集権的なインターネットから個人に分権(権利が分散)したインターネットへ移行した時代」と言えるのではないでしょうか。
少し難しいかもしれませんが、この記事では、「 WEB3.0」について、その具体的な内容と仕組みをWEB2.0との比較から検討しつつ、「WEB3.0」ならではのサービスや特徴について解説していきます。
目次
WEB1.0〜3.0までの歴史
WEB1.0とは
WEB1.0 とは、インターネット黎明期、WWW(= World Wide Web )が普及し、個人がウェブサイトで情報を発信できるようになった時代です。この当時は、 テキストページが主で、今のような画像や動画はほとんど使われていません。情報の発信者と閲覧者が交流することもありませんでした。
WEB2.0とは
WEB2.0とは、WEB1.0より個人が自由にインターネットを使えるようになり、情報の発信者と閲覧者の双方向なコミュニケーションが可能になった時代(現在)を指します。
最も大きなインパクトはiPhoneなどのスマートフォンの普及で、それに伴うSNS の流行や、検索性の向上、アプリケーションの充実などが特徴に挙げられます。
画像や動画コンテンツのシェアも容易になりました。世界中の人々の生活が変化するほどの便利さがあるものの、 WEB2.0 はプラットフォーマーによる中央集権的なインターネット時代ともいえます。
中央集権的とは、つまり、Google や Twitter など特定の企業へ、人々の情報が集中してしまうことを指します。情報が特定企業に集中すると、市場の競争優位性が出てしまうほか、セキュリティリスク(日本でもLINEの個人情報流出問題は記憶に新しいと思います)や、プライバシー問題、特定企業によるデータ改竄リスクなどの問題が発生します。
WEB2.0の課題
WEB2.0が中央集権的であるが上の課題を確認しておきましょう。
ポイント
- 自分のコンテンツやコミュニティが企業の管理下にあり、データを勝手に使用されたり、削除されたりすること。
- サービスの成長に貢献をしても、その実質的な恩恵を受けられないこと。
- サービスの意思決定に関与できず、仕様変更等を受け入れるしかないこと。
WEB3.0とは
上述のとおり、WEB2.0には中央集権化という問題があるのですが、WEB3.0は生活の利便性はそのままに、個人に分権(権利の分散)できることが特徴です。かねてからインターネットのプライバシー問題(検索履歴や行動履歴の流出など)が指摘されていましたが、WEB3.0においては、インターネット上での権利を個人で所有できる時代になるといえます。
またそれを可能とするのが、ビットコインなどの仮想通貨で注目されたブロックチェーン技術です。これをインターネットの世界に応用することが、WEB3.0の基本的な仕組みです。
ブロックチェーン技術とは、簡単に言うと、インターネット上の取引データを適切に記録する技術のことです。
ブロックチェーンを用いたサービスでは、複数のユーザーで取引情報が共有されます。ユーザー同士がネットワーク上で互いのデータをチェックし合う仕組みなので、不正や改竄を行うことが非常に難しくなっています。
WEB3.0 は、このような特性を持ったブロックチェーン技術を活用することで、中央集権化によるプライバシーの問題や、セキュリティリスクを減らしていくと考えられています。
WEB3.0の特徴
セキュリティリスクが軽減できる
WEB3.0の大きな特徴に、セキュリティリスクの軽減があります。ブロックチェーン技術が使用された分散型ネットワークでは、取引情報などが暗号化され、さらにそれが複数のユーザーで共有(個人への分散)されます。
特定の企業・サーバーに情報が集約されている WEB2.0 では、そのサーバーが攻撃にあったり、管理が徹底出来てなかったりすると、大量の個人情報が流出してしまいます。
世界中どこにいてもサービスを利用できる
例えば中国には、グレート・ファイアウォールと呼ばれる検閲システムが存在し、政府によりGoogleやTwitter、YouTubeといったサイトへのアクセスが禁止されています。しかし、WEB3.0ではそのような制限が機能しません。
ブロックチェーンに加わることに条件や権限は設けられておらず、かつ中央集権的なサーバーが存在しないため、誰でも自由に希望するサービスへのアクセスが可能となるのです。
個人情報や行動履歴のデータを自己管理できる
続く特徴は個人情報や行動履歴のデータを自身で管理できることです。現在はWEBで検索を行うと履歴や属性情報を収集して、検索者の興味関心、属性に基づくレコメンドを提供するのが定番になっています。
便利であることは確かですが、これは、企業がサービスの対価として個人情報を収集・管理をしているということでもあります。例えば Googleは検索エンジンを無料で提供する代わりに、検索履歴や行動履歴といった個人情報を取得しています。巨大企業が個人情報を独占している良い例です。
サーバーを介さず直接取引できる
サーバーを介さず個人や企業間で直接取引をできることも特徴です。WEB3.0でのネットワーク接続は、仲介するサーバーを必要としないので、企業と個人、個人と個人が直接取引できるようになります。
例えば、ブロックチェーンを使ったP2P(ピア・ツー・ピア)の自動契約(スマートコントラクト)では、事前に決めた契約定義に基づき、事象が発生すると自動的に決済まで完了します。これにより国や企業など契約を管理する中央組織は必要なくなります。
WEB3.0の課題
個人に責任が生じる
運営主体が不在のため、責任がすべて個人に生じる。つまり、何が起きても自己責任ということです。これまでは運営企業が担ってくれていた責任も個人が負担をしないといけないとなると、果たしてそれがユーザーにとって最適なのか。というのは今後見極めていかなければなりません。
一般的なサービスに適さない可能性がある
また上記と同じく、経済上のサービスに乗るということになると、一番の魅力である中央集権から個人分散への移行ができないということになります。そのためWEB3.0の仕組み自体は一般的なサービス運営には合わず、社会インフラのような国や自治体が主体となって管理するものに適するという意見もあります。
注目のサービス(随時更新)
WEB3.0には幅広いサービス、仕組みが広がっています。ここでは一部ですが、WEB3.0における注目のサービス(仕組み)を紹介します。
仮想通貨(暗号通貨)
有名なビットコインをはじめイーサリアムなど一般的にも馴染み出てきた仕組みで、ブロックチェーン技術を活用したWEB3.0の代表的な仕組みです。投機的な資産運用の一つとみられがちですが、中央集権的な管理をなくし、個人に直接報酬を支払うことができる方法として次世代の資産として期待されています。
メタバース
仮想空間のことで、オンライン上で世界中の人とコミュニケーションをとることができる仕組みになっています。ゲームやチャットのみならず仕事や生活自体も仮想空間で完結できる可能性を秘めています。何ができるかはまだまだ手探りですが、Facebookが社名をmetaに変更したことでも話題になったように世界中が注目している分野です。
NFT
非代替性トークン(non-fungible token)の略で、ブロックチェーン上に構築されるデジタルデータの一種です。資産の所有証明を付与されたデジタルデータのことを指します。最近では数十億円するデジタルアートやキャラクターも登場しており、ファッションやアート業界を中心に話題になっています。
DeFi
DeFiは、ブロックチェーン技術を活用した金融仲介アプリケーションです。すべての取引記録が、ブロックチェーン上に記録されるため、取引記録の正しさはユーザーにより承認されます。中央管理者がなくても安全で信頼性の高い金融サービスと言えます。
このようなサービスが一般化すれば、これまで仲介者の役割を担っていた企業やサービスが不要となります。結果として、そこへ支払っていた手数料などもなくなるでしょう。
DAO
自立分散型組織のことで、WEB3.0における株式会社のような仕組みです。株式の代わりにガバナンストークンと呼ばれるものを発行し、所有者に議決権が与えられるようになっています。DAOでは公平な意思決定が可能で、スピード感も高めることが可能です。
以上の通りWEB3.0には数多くのサービスが存在し、これからもさらに増えていくことになるでしょう。
人々の生活がより便利になると考えられる一方で、課題にも記載した通り一般的な経済上のサービスとして広まればWEB3.0の概念自体が達成されない(中央集権的なサービスのまま)という可能性もあります。まだまだこれから注視していかないといけない分野であることは間違い無いでしょう。
本日は以上です。ありがとうございました。